今がいちばんの働き盛り

 他の作品とか、エッセイとか、いろんなものを読めな読むほど津村記久子の評価が上がっていく。この人は停滞していた純文学の世界についにやってきた何年かに一人の待望の天才なんじゃないか、くらいになってきている。頭使って小説書いてる、問題意識を持って小説書いてる、自分にしか書けない小説書いてる、今のための小説を書いている、描写が巧い、アプローチが多彩、リズムがある、笑えるなどなど、これらが全て当てはまる。なんか、世間もそうだし、周りの人もそうだけど、とにかく全体的に津村記久子評価が低すぎるんじゃないかと思うのだが。衝撃の人材だと思うのだが。でも、とりあえず落ち着けオレ。
 文章が好きなブログで引用されていて気になったので、真夜中の第2号を買ってきてしまった。何が書かれているかというと、彼女のエッセイ。この等身大の姿勢にとても好感が持てる。分不相応な言葉をあえて使う作家と、普通に使わない作家とがいるのだが、前者のほうが受けがいいけど、絶対に後者のほうが信用できる。このとき、この人の苦悩の表現の仕方がとてもステキで、

 毎日文を書いているからといって、頭の中の引き出しにあるすべての言葉を華麗に使いこなしているわけではないのだった。当然のごとく。どちらかというと、引き出しの前のほうに留まっている語句を繰り返し取り出しては貼り付けている。

 この繰り返し貼り付けてしまうことに違和感を持てるか、いや持つのは容易いのだが、そこで分不相応な言葉に逃げずに、この違和感だけを持ち続けられるかどうかがとても重要だと思う。このあと一文たりともムダにできないくらい、笑える等身大の感覚が次々と出てきて、とてもスッキリする。

 眠い。

季刊 真夜中 No.2 2008 Early Autumn 特集:詩とグラフィック

季刊 真夜中 No.2 2008 Early Autumn 特集:詩とグラフィック