この何日かのことで

 文章を書くということが死ぬほど嫌いである。なんだ書いてるじゃないかって、それは違うのだ。これは誰かに向けた言葉じゃないんだもの。少しまえに、頼まれて本当に本当にちょっとした文章を書いただけなのだが(もちろんライターとかそういうことではまったくないのですよ)、もう死にたい。自分にとってまったく興味がなくて、できれば関わりたくないものを書いたからだろうと思う。それが皆の目に触れるだなんて考えただけで死にたい。触れて、その感想がそれぞれの人間にたまっていく、と考えただけで死にたい。手足に毒素がたまっていってやがて壊死してボロボロになるようなそういう感覚になれる。どうやって死のうかと思わずちゃんと考えてしまった。いや、冷静になれば、ただ単に嫌なことってだけで、死ぬだなんて大げさなのは分かっている。ただ、何かを代表して文章を書くことは、もっとも嫌なことのひとつだ。おれは何も代表しない。
 今日、週刊誌の記事を書いてるような人をたくさん見て、自分のことだったらどうなるだろうと想像してみたのだが、考えただけで死にたいだろうなと思った。会社とか雑誌を代表して意見を書くだなんて、考えただけで恐ろしい。そんな権利なんかオレにないのだ。でも、それが楽しい人もいるのだろうな。代表して、間違いを犯して(間違いを犯さなければいいのだが)何かを傷つけたりしてしまったら、どうするのだろう。オレは自分が嫌いなもの以外は傷つけたくないのだ。それが仕事だと割り切れるのだろうか。割り切れるのだろうけど、先輩とかに「お前らしい書き方でよかった」とか言われたらもう即自殺したくなるだろうなと思う。俺らしいって何だよ。生きてる価値のない人間のオレらしいって何だよ・・・とまあ、確実にダメスパイラルに陥ることは、容易に予想がつく。もちろん生きてる価値ないというほどひどい存在でもないことくらいは分かっているのだ。だが、そんなことをしてしまったら、死にたくなるに決まっている。
 本当は実にシンプルなことなのだ。自分の考えを出さなくて済む仕事がしたい。いや、違う、自分の考えを出すことは場合によっては楽しい。しかし、自分の考えを出すことを強要されるのは地獄の苦しみなのだ。そういう仕事があれば、どこかの時期で変わるべきなのだろう。
 いっぽうで嬉しいことや楽しいことももちろんあるのだ。あるのだけど、帳消しになるくらい死にたい。