わからない

 ぼくは、
 家々がゆれはじめたら、
 ぼくめがけて倒れてきたら、
 いいとおもう、
 そのときはさぞかし恐ろしいことだろう。

 ぼくは、
 自分の心臓が裏返しになったら、
 自分の頭が停止したら、
 いいとおもう、
 そのときはさぞかし恐ろしかろう。

 この上もなく恐ろしいことを
 ぼくは自分の胸におしつけたい。
 ぼくは不安にあこがれる。
 苦悩にあこがれる。

 ――「不安」